くずし字とは、漢字や平仮名をくねくねとミミズがはったように書いた文字のことで、江戸時代以前の日本で使われてきた文字です。
その名前のとおりくずし字は「くずして書いた手書き文字」や「くずした手書き文字をもとにした版本の文字」をさします。
現代でも、くずし字を目にする機会は少なくありません。
例えば、巻物の手紙が時代劇に登場したり、百人一首の札だったり、石碑の文字だったり、お店の看板だったり……。
くねくねと連なる字を見て「まったく読めない」「何が書いてあるんだろう?」このように思う方は多いでしょう。
ここからは、くずし字とはなにか? について解説していきます。
くずし字ってなに?
くずし字とは、省略したり続けたりして書かれた文字です。
ここからは、くずし字とはなにか? を理解するために2つのポイントをお伝えします。
くずし字と草書の違いは?
「くずした文字」と聞いて、くずし字とは「草書のことだ」と考える方も多いのではないでしょうか。
ところが、くずし字と草書は少し違う点があるのです。
それぞれの特徴をお伝えします。
日本古典籍講習会の資料には、下記のように記載されています。
「くずし字」という用語自体は、おもに歴史学や日本文学、書誌学の研究分野で使用される。 書道史では行書、草書など、点画の省略段階を区分し、「くずし字」という包括的な用語は使用しない。 ただし、書道史研究の対象外とされやすい近世文書や古典籍の文字については、明確な区分が存在しないことから、「くずし字」という他の研究分野での用語がそのまま一般的に使われている。
出典:講師 恋田知子氏(国文学研究資料館助教)くずし字について ①くずし字の見方・読み方(概説)
書道では、くずした文字のことを「くずし字」という括り方はしていないようですね。
変体仮名文字とは?
私たちにとって「あ」と読める平仮名は「あ」しかありませんよね。
しかし、1900年以前は「あ」と読む字には「阿」や「愛」など複数の文字が使われていました。
「い」や「う」など他のの文字も同様です。国文学研究資料館の公式HPにくずし字の画像がありますのでご覧ください。
このように同じ音でいくつも文字の種類があると、とてもややこしいですよね。
そこで1900年(明治33年)小学校令施行規則によって、1つの音に1つの平仮名を使うことが定められました。
これが、現在使われている五十音です。
変体仮名とは、1900年の小学校令施行規則以降に定められた字体以外の平仮名のこと。
くずし字の中には、変体仮名が多く使われています。
また、同じ字でもくずし方によって違う文字のように見えるものもあり、くずし字が読みにくい原因のひとつになっています。
くずし字が普及した江戸時代
今から120年ほど前には、誰もがくずし字を使っていたなんて驚きです。
とはいえ、なぜもっとわかりやすい文字にしなかったのか疑問に思いますよね。
その理由は、くずし字が墨で縦書きにサラサラと書くのに最適な文字だったから。
楷書は読みやすいのですが、1文字ずつ書くので時間がかかってしまいます。
一方、くずし字はかんたんで早く書ける便利な文字。
コピー機も大量印刷ができる機械もない江戸時代は、人の手によってなるべく早くたくさんの文字を書くことが重要な要素だったのです。
現在の日本では、くずし字を読みこなせる人は人口の0.01%程度(数千人程度)といわれています。 (参考文献:Kaggle くずし字認識)
今やほとんどの日本人が、くずし字を読めなくなってしまいました。
くずし字を学んで継承しよう
くずし字とは、草書や行書、変体仮名文字を含む手書き文字のこと。
くずし字は1900年以前、一般に広く普及していました。
日本の歴史や文化を知るには、これからも「くずし字」を学び継承していくことが大切ですね。